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相続税と贈与税って?

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相続税は相続または遺贈(死因贈与を含む)によって財産を取得した場合にかかる税金で、贈与税は個人から贈与によって財産を取得した場合にかかる税金です。

贈与税はよく「相続税の補完税」といわれます。たとえば、被相続人が生前に相続人などに財産を贈与することで相続税の対象となる財産を減らしたとすると、贈与をしない人に比べて税負担に不公平が生じます。そこで贈与税は、生前の贈与に対して課税することによって、相続税で課税されない部分を補完する性格を持っています。

このように両税は密接な関係をもっているため、相続税法というひとつの法律の中で規定されています。(つまり、贈与税法という法律はないんです)

相続税の計算はどうやるの?

相続税の計算の流れは大きく3つに分けることができます。
(平成27年1月1日以降に発生する相続に適用)

ステップ1.課税価格の算出

ステップ2.相続税の総額の算出

ステップ3.各人ごとの納付税額の算出

※なお、これらの計算の前に、相続人の把握と相続分の確定、および財産評価が必要です。

ステップ1.課税価格の算出

課税価格の算出は、次のように行ないます。

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ステップ2.相続税の総額の算出

課税される遺産総額をいったん法定相続分で仮分割し、その金額をもとに相続税の総額を算出します。

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※1.法定相続人の数とは、民法上の法定相続人に下記の点を反映させたものです。

(1)養子の数のカウント

実子がいる場合・・・・養子のうち1人まで

実子がいない場合・・・養子のうち2人まで

(2)相続放棄をした人がいる場合も、その人を算入

※2相続税の速算表

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ステップ3.各人ごとの納付税額の算出

実際に相続した遺産の課税価格の割合に応じて、各人の相続税額を算出します。

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※3税額控除や加算には、下記のようなものがあります。

(1)配偶者の税額軽減
配偶者については、被相続人死亡後の生活への配慮から税額軽減の規定があります。
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※婚姻の届出が必要で、内縁関係にある人には適用されません。
※未分割の財産は含めません。(ただし、申告期限から3年以内に分割された場合は適用されます)
(2)贈与税額控除
被相続人から相続開始前3年以内に贈与を受けている場合、その贈与財産にかかる贈与税額を控除します。
(3)相次相続控除
10年以内に続けて相続があった場合には、前の相続において課された相続税相当額のうち一定額を控除します。
(4)未成年者控除
(5)障害者控除
(6)外国課税控除
相続財産の中に国外財産があり、その国において相続税に相当する税が課せられている場合には、一定額を控除します。
(7)相続税額の2割加算
被相続人の一親等の血族(代襲相続人を含む)および配偶者以外の人が、相続や遺贈によって財産を取得した場合、その人の相続税額が2割加算されます。
※いわゆる孫養子(被相続人の直系卑属が養子になっている場合)も2割加算です。
※代襲相続の場合は、加算の対象になりません。

簡単に試算する方法は無いの?

前項ステップ1で課税価格が算出できれば、下記の表が目安になります。

(平成27年1月1日以後の相続または遺贈について適用)

《相続税負担額早見表》

(単位:万円)

相続財産
(基礎控除前の課税価格)
配偶者がいる場合配偶者がいない場合
子ども1人子ども2人子ども3人子ども1人子ども2人子ども3人
5,000 40 10 0 160 80 20
7,000 160 110 80 480 320 220
10,000 385 315 262 1220 770 630
30,000 3,460 2,860 2,540 9,180 6,920 5,460
50,000 7,605 6,555 5,962 19,000 15,210 12,980
100,000 19,750 17,810 16,635 45,820 39,500 35,000

(注1)相続財産は、基礎控除額を差し引く前の課税価格の合計額。

(注2)被相続人の遺産を相続人が法定相続割合で相続したものとして計算。

(注3)配偶者の税額軽減を法定相続分まで適用。子どもは成人として計算。

相続税の申告は必ず必要なの?

課税価格の合計額が、基礎控除額(3000万円+600万円×法定相続人の数)を超えなければ、申告の必要はありません。

申告書の提出が必要な場合は以下のとおりです。

  • 上記を超える、相続人、受遺者、相続時精算課税適用者
  • 配偶者の税額軽減の適用を受ける場合
  • 小規模宅地等の相続税の課税価格の計算の特例を受ける場合
  • 相続財産を公益法人等に寄付した場合の非課税の適用を受ける場合
  • 特定事業用資産の相続税の課税価格の計算の特例を受ける場合

なお、申告書の提出期限までに財産が未分割の場合は、法定相続分で分割したものとして課税価格を計算して申告します。

申告書はいつ、どこに提出するの?

申告書の提出期限は、相続の開始があったことを知った日の翌日から10ヶ月以内です。

提出先は、被相続人が死亡時したときの住所地の所轄税務署長です。

また、被相続人が所得税の納税義務者であった場合には、4ヶ月以内に被相続人にかかる所得税の確定申告をし、所得税を納付しなければなりません。(準確定申告といいます)

相続税の計算が間違っていたときはどうするの?

1.過少申告の場合(修正申告)

財産の計上漏れなど、申告した税額に不足がある場合は、税務署長の更正があるまでに修正申告書を提出することができます。

2.過大申告の場合(更正請求)

計算の誤り等によって、申告した税額が過大である場合、申告期限から5年以内に限り税務署長へ更正の請求をすることができます。

認められた場合は、相続税本税およびそれに対する利子税の還付も受けることができます。

相続税の納税方法にはどんな種類があるの?

税金の納付方法は、現金による一括納付が原則です。

しかし、相続税は他の税目と違い、財産に対して課税されるため、納付が困難な場合もあります。そこで、分割払いによる納税(延納)や、相続によって取得した財産による納税(物納)が認められています。

相続税の納付期限は?

申告や更正などによって確定した相続税は、下記の納期限までに納付しなければなりません。

1.期限内申告にかかる相続税

期限内申告書の提出期限

2.期限後申告または修正申告にかかる相続税

その申告書を提出した日

3.更正または決定にかかる相続税

更正または決定の通知書が発せられた日の翌日から起算して1ヶ月を経過する日

相続税を納期限までに納付しなかった場合には、延滞税を納付しなければなりません。

1.納期限の翌日から2ヶ月を経過する日まで特例基準割合(注)に1%を加算した割合

2.上記を超えた場合

特例基準割合に7.3%を加算した割合
(注)特例基準割合は毎年変更され、年4.3~4.5%くらいで推移。

延納って?

相続税を、いわば年1回の元金均等払いで納付する方法です。延納期間中には、利子税(利息)が課されます。

相続税の延納には、下記の要件を満たさなければなりません。

1.金銭で一時に納付することが困難であること。

2.相続税額が10万円を超えること。

3.担保を提供すること。(延納税額が50万円未満で、延納期間が3年以下の場合は不要)

4.申告期限までに延納申請書を提出し、税務署長の許可を得ること。

物納って?

相続税を、相続によって取得した財産そのもので納付する方法です。これは、相続税だけに認められる納税方法です

相続税の物納には、下記の要件を満たさなければなりません。

1.延納によっても金銭で納付することが困難であること。

2.申告期限までに、物納申請書を提出し、税務署長の許可を得ること。

3.その財産が物納に充てることができる財産であること。

物納する場合は、相続税の納期限までに金銭納付が困難な事由、物納財産等を記載した物納申請書を所轄税務署長に提出します。

平成18年4月からは、物納申請期限から原則3ヶ月以内に許可又は却下が行なわれます。

物納できない財産ってあるの?

物納できない財産については、国税庁発行の「相続税の物納の手引き」に列挙されています。

参考:相続税の物納の手引き(平成24年 国税庁)

別表1 管理処分不的確財産

(物納に充てることができない財産の一覧表) より

  1. 担保権の設定の登記がされていることその他これに準ずる事情がある不動産
  2. 権利の帰属について争いがある不動産
  3. 境界が明らかではない土地
  4. 隣接する不動産の所有者その他の者との争訟によらなければ通常の使用ができないと見込まれる不動産
  5. 他の土地に囲まれて公道に通じない土地で民法第210条の規定による通行権の内容が明確でないもの
  6. 借地権の目的となっている土地で、当該借地権を有する者が不明であることその他これに類する事情のあるもの
  7. 他の不動産と社会通念上一体として利用されている不動産若しくは利用されるべき不動産又は二以上の者の共有に属する不動産
  8. 耐用年数を経過している建物
  9. 敷金の返還に係る債務その他の債務を国が負担することとなる不動産
  10. 管理又は処分を行うために要する費用の額がその収納価額と比較して過大となると見込まれる不動産
  11. 公の秩序又は善良の風俗を害するおそれのある目的に使用されている不動産その他社会通念上適切でないと認められる目的に使用されている不動産
  12. 引渡しに際して通常必要とされている行為がされていない不動産

(注)物納を許可する時までに不適当とする事由が消滅

(解除)されるとにはこの限りではありません。

原本はここから入手できます。(PDFファイル/6,012KB)

物納不適格財産はどうにもならない?

現状は物納不適格な財産であっても、物納を許可する時までに不適格事由を整備すれば、物納も可能です。

たとえば、お隣との境界が明確でないならば、土地家屋調査士に依頼して境界確定をすることで物納可能財産に変えることができます。

さらに、これを生前に被相続人の費用で行なっておけば、その費用相当額の金融資産が減少し、結果として相続税の軽減につながります。

売却がトク?物納がトク?

納税資金の準備に相続した土地を売却して金銭納付するか、その土地を物納にするかの選択が必要な場合があります。

売却か物納かの選択は、売却した場合の手取り額と、相続税評価額とを比較して検討します。

売却した場合は、仲介手数料など諸費用や譲渡所得税がかかりますので、売却価格からこれらを差し引いた金額を納税に充てることができます。

物納の場合は、その財産の譲渡所得は非課税ですので、収納価額(=相続税評価額)が納税に充てられる金額になります。

ただし、物納要件整備のための測量費などが必要になる場合には、この負担も考慮する必要があります。

私個人の意見としては、とりあえず物納を申請しておき、その不動産が有利な価格で売却できた場合には申請を取下げて金銭納付に切り替え、どうしても有利な買い手が見つからない場合には、そのまま物納してしまうことが得策と考えます。

物納がトク?延納がトク?

延納は、最長20年の年賦(いわゆるローン)ですので、相続税額が多額である場合は利子税も含めて毎年の納税額も多額になります。

これを毎年の収入から所得税や生活費などを除いた中から納付することになります。

したがって、延納可能な額はどれくらいか、延納期間にわたって延納に充てる資金がえられるかなどをよく検討する必要があります。

つまり、延納には下記のようなリスクが付きまといます。

  1. 分納税額および利子税は、毎年の所得税などと生活費を支払った後に残る資金で賄う必要がある。
  2. 延納の利子税は、不動産所得の必要経費に算入できない。
  3. 固定資産税などの負担があるうえ、地価の下落が続くと不動産の価値が目減りしていく。
  4. 相続税申告期限後3年を経過すると、不動産を売却した際に相続税の取得費加算の特例が適用できない。

一方、物納は要件を満たしていれば収納され、収納価額も相続税評価額になりますので、安全な方法といえます。
(物納とは、国に、計算どおりの金額で売却する制度とも言えます)

私個人の意見としては、なるべく延納は選択しない方が得策と考えます。

相続時精算課税制度って何?

この制度は、高齢者から次世代への資産移転の円滑化を促すために創設されました。

1.概要

生前贈与を受ける際、贈与時に贈与税を支払い、その後の相続時に生前の贈与財産を相続財産に加えて相続税を計算し、生前の贈与税を相続税額から控除する制度です。

2.適用対象者

贈与者は65歳以上の親
受贈者は20歳以上の子である推定相続人

3.適用対象財産

贈与財産の種類、金額、贈与回数に制限はありません。

4.特別控除額

受贈者単位で2500万円までは、贈与税が非課税とされます。また、両親からの生前贈与について、ともにこの制度を選択した場合、贈与者ごとにそれぞれ2500万円までが非課税とされます。

5.適用税率

特別控除額を超える部分に対して、一律20%です。

6.住宅取得資金に係る特例

自己の居住の用に供する一定の家屋を取得する資金などの贈与を受ける場合は、65歳未満の親からの贈与についても適用されます。
平成26年12月31日まで適用されます。

7.平成25年度税制改正

受贈者の範囲に20歳以上の孫も追加。贈与者の年齢要件を60歳に引き下げ。
平成27年1月1日以降の贈与から適用されます。

※この届出をした場合、贈与者(親)の相続時までこの制度が継続され、途中で取りやめることはできません。

※この選択は、受贈者(子)である兄弟姉妹がそれぞれ、贈与者である父、母ごとに選択できます。

※相続財産に加算する生前贈与財産の価額は、贈与時の時価とされます。

相続時精算課税の活用方法は?

1.相続税対策としては・・・?

この制度を選択した場合、相続時には贈与財産を全て相続財産に加算しますので、相続税の軽減効果はありません。

ただ、加算される贈与財産の価額は、贈与時の時価とされますので、贈与時よりも相続時のほうが値上がりする財産なら、相続税軽減になる場合があります。

たとえば、自社株の移転を有効に行い、事業継承をスムーズにするという場合です。

このように、相続税の軽減対策としては、限られたケースにしか活用できません。

したがって、相続税軽減対策のみの目的で生前贈与を行なうのであれば、この制度を選択せずに、従来の毎年110万円の贈与税の基礎控除を使って長期的に財産の移転を図った方が一般的には効果的と思われます。

2.財産の有効活用としては・・・?

節税という視点ではなく、財産の活用という視点から利用する場合には、次のようなメリットが考えられます。

  1. 多額の財産移転のタイミングを任意に選択できる。(事業継承のための自社株の移転なら、相続税軽減の可能性も)
  2. 贈与から相続までの間、財産移転による利益の享受ができる。(子の世代が、少ないローン負担で早期にマイホームを取得するなど)

つまり、相続税対策にはなりませんが、財産を有効活用した豊かなライフプランを親子ともども実現するための相続対策として、有効に活用できる制度だと思われます。

物納制度は平成18年度改正で変わったの?

物納手続きの明確化・迅速化を図り、次の項目が改正されました。

相続税の延納には、下記の要件を満たさなければなりません。

1.物納不適格財産の明確化等

2.物納手続きの明確化

3.物納申請の許可に係る審査機関の法定等

4.物納申請を却下された者の延納の申請

5.延納中の物納の選択

6.その他所要の措置

これまで、物納の許可基準が明確でなかったり、手続きに長い期間を要していたケースがありました。今回の改正でこれらが整備されました。

不動産の物納はしやすくなったの?

しやすくなった点と、しにくくなった点があります。

「物納申請の許可又は却下を3ヶ月以内に行なう」とか、「市街化調整区域の土地や無道路地を物納できる可能性がある」という項目は、納税者に有利になったと言えるでしょう。

しかし、土地家屋調査士の立場から見て、「物納申請時(=相続税申告期限)に境界確認書を提出」とか、「物納が却下された場合の再申請は1回に限る」という項目は、とても高いハードルになりました。

私たち土地家屋調査士が境界確認の依頼を受けた場合、最短で2~3ヶ月の日数を要します。お隣が境界に納得しないと、そのまま作業中断という事態も考えられます。

つまり、境界未確定の土地を物納する場合、相続税申告期限10ヶ月から上記日数を前倒しして、遺産分割協議を完了させる必要があるのです。

書類が全て揃っていなくても、延長の届出ができるのでは?

物納手続きに必要な書類に不備があった場合、税務署長はこれらの必要書類の補正又は提出を請求できます。そして、請求後20日以内に書類の補正又は提出がされなかった場合、物納申請を取り下げたものとみなされます。

書類の準備に時間を要する場合、届出により上記期限を最長1年間延長できます。ただし、一度の届出で延長できる期間は3ヶ月までで、期間満了時には、一年に達するまで、再届出によって延長します。

大切なポイントは、2つあります。

1.期限の延長は最長で1年です。お隣と境界でモメてしまうと、期限に間に合わなくなってしまいます。

2.延長の届出を忘れてしまうと、取り下げたものとみなされます。物納の経験が豊富なアドバイザーに相談しましょう。

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